皆さま、
こんにちは。
かりおです。
前回のお話。
旅から戻った私は、
日常のスピードに追いつこうと都会へ出かけました。
11月の仕事に向けた下見です。
ところが。
お昼ごはんを食べようと立ち寄ったコンビニで、
まさかの現代社会への復帰試験が始まってしまったのです。
試験官は電子レンジ。
いやいやいや。
電子レンジなんて、
普段から毎日使っておりますとも。
お弁当を温めるぐらい、
朝飯前でございます。
……お昼ごはんですけどね。
しかし。
この何でもないはずの作業が、
私の頭の中に眠っていた記憶まで呼び起こすとは。
いやはや。
人間というものは、
なかなか面白い生き物でございますなぁ。
■ 電子レンジ10台。何ワットなの⁉
え⁉
自分で温めるの⁉
店員さんの指の先に電子レンジがずらりと10台。
いやぁ〜、
都会は設備まで豪勢ですねぇ。
これだけあれば選び放題。
ところが、
いざ親子丼を温めようとして気づきました。
何ワットなの?
1台には1500Wの表示。
ほかの電子レンジは、
どこに表示があるのか分かりません。
店員さんがいるレジは、
ずいぶん離れている。
ところが私。
表示の見つからない電子レンジを前に、
なぜか妙な自信が湧いてきたのです。
「きっと他は500Wでしょう!」
……。
どこから来たのでしょうね、
その確信。
電子レンジの見た目からワット数を判断する特殊能力など、
私にはございません。
にもかかわらず。
お弁当に書かれていた4分間を設定。
スタートボタンを押しました。
あとは温かい親子丼を待つだけ。
実に簡単です。
そう。
簡単なはずだったのです。
根拠のない自信だけは1500W級っ!
そして4分後。
電子レンジの扉を開けた私は、
その場で固まりました。
……え?
そこにあったのは、
私が知っている親子丼とは明らかに違う姿のお弁当。
容器は今にも爆発しそうな雰囲気。
中身も何やら、
ただならぬ状態になっております。
親子丼がぁぁぁ〜〜〜‼
ちょっと待ってくださいませ。
私は温めたかっただけなのです。
新しい料理を開発するつもりなど、
毛頭ございません。
その瞬間。
なぜか脳裏に浮かんだのは、
北朝鮮の国境の川沿いで爆発が続くニュースの映像。
そして頭の中では、
勝手に緊急速報が始まりました。
「やめて‼ ここを爆破しないで‼」
いやいや。
爆破されそうなのは私の親子丼です。
しかも原因を作ったのは、
ほかでもない私。
脳内の映像担当と実況担当は、
こういうときだけ実に仕事が早い。
できれば4分前に、
ワット数確認担当として働いていただきたかった。
■ 親子丼を見た瞬間、記憶が飛び出してきた⁉
恐る恐る親子丼を眺めます。
ご飯はお餅に近い食感。
卵はふんわりどころか、
一枚のシート状。
……おおぅ。
これは一体何という料理なのでしょうか。
親子丼というより、
親子丼味の宇宙食。
ところで。
私はここで、
ちょっと不思議なことに気づきました。
目の前にあったのは、
ただのお弁当です。
それなのに、
頭の中には以前見たニュース映像が浮かびました。
爆発しそうな容器を見て、
過去に見た映像を思い出す。
その映像に驚き、
心の中で叫び声まで上げてしまう。
別にニュースのことを考えようとしていたわけではありません。
記憶を探そうともしていません。
ただ、
目の前の親子丼を見ただけ。
なのに。
親子丼ひとつで、脳内ニュース速報が勝手に放送開始っ!
いやぁ〜、
人間の頭の中というのは不思議ですねぇ。
でも考えてみれば、
こういうことは普段の暮らしにもあります。
懐かしい匂いで、
昔の景色を思い出したり。
聞き覚えのある音で、
誰かの顔が浮かんだり。
食べ物の味で、
以前の出来事を思い出したり。
目や耳や鼻や舌から入ってきたものが、
いつの間にか記憶や気持ちと結びついている。
そして、
その結びつきによって、
驚いたり笑ったり考えたりしている。
今回の私もそうでした。
まず目の前の親子丼を見た。
過去の映像を思い出した。
驚いて、
思わず叫びたくなった。
そしてようやく、
どうしてこんな姿になったのかを考え始めたのです。
見る。感じる。思い出す。考える。
それぞれ別々の出来事のようで、
実はつながっていたのですね。
もっとも。
今回のきっかけが親子丼爆弾というのは、
少々いただけませんが。
■ 布地を触って、初めて分かること
親子丼の衝撃から立ち直り、
ふと時計を確認しました。
あっ!
今日は親子丼の研究に来たのではありません。
11月の仕事に向けた下見でした。
気を取り直して、
本来の目的へ向かいます。
今回確かめたかったものの一つが布地。
最近はネットで何でも買える便利な時代。
色も豊富。
値段も比較できる。
自宅にいながら注文できるのですから、
本当にありがたいことです。
でも。
布地というものは、
画面だけでは分からないことがあります。
色合い。
厚み。
柔らかさ。
手触り。
写真で見たときの印象と、
実際に触れたときの感覚は必ずしも同じではありません。
実は私。
危うく値段だけでポチりかけたものがありました。
でも今回は、
実物を確かめようと思って出かけてきたのです。
布地を目で見て、
手で触れてみる。
思っていた色と同じか。
厚みはどうか。
使いたいものに合いそうか。
画面を見ながら考えていたことが、
実物に触れることで少しずつ具体的になっていきます。
ああ、
こういう感じなのですね。
なるほど。
これは実際に見てよかった。
そう思うことができました。
そして、
ふと親子丼のことが頭をよぎります。
電子レンジでは、
頭の中だけで500Wだと決めつけました。
布地については、
頭の中だけで決めずに実物を確かめました。
同じ私なのに、
やっていることが正反対。
いやはや。
なかなか忙しい人間ですね。
でも、
ここに大きな違いがあったのです。
親子丼では、
想像だけで行動を決めました。
布地では、
実際に見て触れたことをもとに判断しようとしました。
身体で受け取ったものが、自分の判断を変えていく。
そう考えると、
わざわざ都会まで足を運んだ意味も見えてきます。
単に布地を買うためではなく、
自分で確かめて選ぶために来たのですね。
■ 「きっと」から、自分で確かめる暮らしへ
ここで私は、
自分の行動を振り返ってみました。
電子レンジでは。
「きっと500Wでしょう!」
布地の買い物では。
「きっとこれでいいでしょう!」
……あら?
私の頭の中には、
ずいぶん便利な言葉が住み着いているようです。
その名も。
何でも解決した気になれる魔法の言葉「きっと」!
いやいや。
何も解決していませんから。
確認を省略しただけですから。
それなのに自信だけは一人前。
困ったものですなぁ。
でも、
今回の布地の下見では少し違いました。
気になったから、
出かけてみた。
実際に見て、
触れてみた。
そこで感じたことをもとに、
どうするかを考えた。
そしてもう一つ。
これからの準備で気になっているのが、
叔母の遺品として譲り受けることになったロックミシンです。
使い方は覚えているかしら。
今の私にも扱えるかしら。
どのくらい練習が必要かしら。
考え始めると、
またまた脳内会議が始まりそうです。
ここでもつい、
あの言葉が顔を出します。
「きっと覚えているでしょう!」
……危ない危ない。
またまた登場しました。
私の「きっと」。
ロックミシンが届いたら、
まずは状態を確かめる。
使い方を確認する。
試し縫いをして、
手の感覚を取り戻す。
そして、
実際にできたことや難しかったことから、
次の準備を考える。
そうすればよいのでしょう。
最初から頭の中だけで、
すべてを決める必要はないのです。
見て。
触れて。
感じて。
思い出して。
考えて。
動いてみる。
それは何か特別な訓練ではなく、
毎日の暮らしの中でも繰り返していることなのですね。
■ 身体は最寄り駅。頭はまだ竜宮城?
そんなことを考えているうちに、
電車は最寄り駅へ。
いやぁ〜、
今日はずいぶん勉強になった一日でした。
電子レンジのワット数。
親子丼の変わり果てた姿。
突然浮かんだニュースの映像。
布地の色や手触り。
そしてロックミシンのこと。
一見すると、
まったく関係のない出来事ばかり。
でも、
その一つひとつを振り返ると、
共通していることがありました。
私たちは毎日の暮らしの中で、
いろいろなものを身体で受け取っています。
見たもの。
触れたもの。
聞いたもの。
味わったもの。
そこに記憶や感情が重なって、
自分なりの考えが生まれてくる。
そして、
何をするかを選んでいる。
今日の私でいえば、
親子丼の姿から過去の映像を思い出し、
布地の手触りから準備の仕方を考えました。
頭だけで考えていたつもりでも、
身体から受け取っているものがたくさんあったのです。
旅から戻った私は、
日常のスピードに追いつこうと必死でした。
でも、
急いで頭だけを働かせても、
うまくいかないことがあります。
身体を動かしてみる。
目で確かめる。
手で触れる。
ふと浮かんだ記憶に気づく。
そのときの気持ちを受け止める。
そして、
もう一度考えてみる。
身体を感じて、考える。
それは特別な場所でしかできないことではなく、
私たちの日常の中にあるものなのかもしれません。
自分が何を見て、
何を感じて、
どう考えたのか。
そこに少し目を向けるだけで、
いつもの暮らしにも新しい発見がある。
そしてその発見が、
次に何をするかという自分の選択につながっていく。
……と。
なかなかよい感じにまとまった、
まさにそのとき。
あっ‼
今日は祝日だったぁぁぁ〜〜〜‼
そうです。
通常業務のスケジュールに、
変更があったのでした。
……。
ちょっと待ってくださいませ。
親子丼から何を学んだのでしょう、
私は。
慌てて時計とメモを確認。
身体は無事に最寄り駅まで帰ってきたというのに、
頭の中はまだ竜宮城。
まるで浦島太郎でございます。
でも。
思い出したから、
確認できた。
確認したから、
次にどうするか考えられる。
完璧ではありませんが、
これも今日の学びの続きなのでしょう。
身体を感じることは、
自分の暮らしを考えること。
そして、
自分で選んで動くことにつながっている。
そんなことを、
親子丼と布地と祝日の予定変更から教わった一日でした。
……もっとも。
ひとつだけ、
大きな問題が残っております。
あの電子レンジ。
結局何ワットだったのでしょうね。
最後まで確認していないんか〜〜〜い‼
いやはや。
感じて考えることの面白さには気づきましたが、
どうやら確認する習慣はまだ修行中。
でも、
ここでふと思うのです。
自分が感じたことを、
もう少し確かめてみたらどうなるのでしょう。
感覚だけでは分からないことまで、
見えてくるのでしょうか。
そんな疑問も、
これからの楽しみにしておきたいと思います。
それでは皆さま。
明日も、
どうぞよい一日を。



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