第37話|日常に戻ったはずなのに⁉ ― ここはパラレルワールド?

雲の輪をまとったような富士山と新幹線から見える風景。日常へ戻るはずが頭の中だけ混乱している第37話のイメージ。 健社ダンプロ

皆さま、こんばんは。
かりおです。

叔母の家の中は、
5か月前と何も変わっていませんでした。

家具も、
お裁縫道具も、
ロックミシンも。

そこだけ時間停止ボタンを押されたような、
なんとも不思議な空間。

しんみりする私。

……の横で、
現実担当の私もちゃっかり出勤しておりました。

叔母の家から駅までは、
25分弱。

駅弁とお茶を買い、
帰り支度はひと安心。

計画通り!

……と思った数分後。

気づいてしまったのです。

お茶、
自動販売機で買った方が安かった。

やられた!

数十円の話なのに、
この静かな敗北感。

私の中の節約担当部署、
今日も小銭にだけは異様に敏感です。

新幹線に乗ってからも、
頭の中は叔母の家のことでいっぱい。

ロックミシンはどう運ぶのか。

お裁縫道具はどう整理するのか。

次はいつ実家へ帰るのか。

そんなことを考えていたら、
車窓の向こうに富士山。

澄み切った青空の下、

山の中腹には神様の輪のような白い雲。



これは撮るしかない。



撮らない方が失礼。



私はスマホを構え、

観光大臣のように写真を撮りまくりました。



この景色を通り過ぎれば本拠地。



そして、

いつもの日常へ。



そう思っていたのですが。

日常復帰したはずが、脳内だけ迷子

帰宅後、
荷物を置き、
バッグをいつものサックに替え、
仕事に必要なものだけ詰め直します。

よし。

日常生活に復帰。

いつもの道を歩き、
いつもの職場へ到着。

身体は完璧です。

完全なる自動操縦。

ところが。

14時30分からの仕事、
キャンセルになっていたのです。

そうでした。

連絡、
受けていました。

知っていました。

なのに来ました。

理由はただ一つ。

いつもの土曜日だったからです。

脳内スケジュール管理部、
ここで全員フリーズ。


「えっ?連絡、受けていましたよね?」


はい。

受けていました。


「では、なぜ来たんですか?」


いつもの土曜日だったからです。

以上、
現場からでした。

しかも15時30分からは見学の方。

急ぎの書類手直し。

国際メールの送信忘れ。

前回のルーティンワークも、
どこまで進めたのか記憶が失踪中。

頭の中では緊急会議が開催されました。


「記憶管理部、捜索願を提出中です!」


「国際連絡部、未送信案件を発見しました!」


「文章校正部、煙が出ております!」


全員、
落ち着いて。

……と言っている私が、
一番落ち着いていません。


日常に戻ったつもりが、脳内だけ新幹線の網棚に置き去り事件。


あれ。

私は本当に本拠地へ戻ってきたのでしょうか。

富士山の神様の輪を通り過ぎた瞬間、
世界線がズレたのでは。

ここは、
パラレルワールド⁉️

いや。

違います。

ズレていたのは世界ではなく、
私の頭の中でした。

日常は、毎日よいしょと組み立てるもの

身体はいつもの場所に戻っていても、
頭の中には叔母の家の風景がまだぎっしり。

そこへ今日の予定が、
上からドサドサ積まれていく。

そりゃあ脳内の棚もミシミシ鳴ります。

叔母の家モードを閉じて、
仕事モードを起動。

そんな便利機能があればよいのですが、
現実は開きっぱなしのタブだらけ。

しかも全部、
地味に大事。

だからこそ、
まず一つ。

目の前の仕事から片づける。

忘れたことは思い出す。

思い出せないことは確認する。

日常とは、
最初から完成品として置いてあるものではなく、
毎日よいしょと組み立て直すものなのかもしれません。

さてさて。

私の頭の中の緊急対策本部。

そろそろ閉会していただけませんか。


「明日の予定を確認してからです!」


ごもっとも。

ぐうの音も出ません。

どうやら、
パラレルワールドでも残業はあるようです。

しかも、
脳内残業代は出ません。

それでは皆さま、
また次回。

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