3月10日。
あの日、
あの日、
あの日の朝、カーテンを開けると。
いつもの景色が、
真っ白な世界に変わっていました。
シンシン…。
そんな音が聞こえるような、
それでも無音の世界。
それでもヒヨちゃんは。
もう、来ていました。
いつもの木に。
大雪なのに。
少しだけ、驚きながら。
同時に、ふと思うんです。
ちゃんと来るんだな、と。
慌てて。
リンゴを出しました。
習慣というのは、
こういうときに出るものです。
食べるかどうかは分からないけれど。
とりあえず、出す。
それだけ。
すると。
迷いなく。
リンゴの方へ向かってくる。
そして。
食べる。
いつもと同じように。
何事もなかったかのように。
雪の日でも。
ちゃんと来て。
ちゃんと食べる。
その姿を見ていたら。
なんだか。
静かに、心が動きました。
すごいな、というより。
あぁ。
こういうものなんだな、と。
特別なことをしているわけでもなく。
頑張っている感じでもなく。
ただ。
いつも通りに、そこにいる。
それだけなのに。
ちゃんと伝わってくるものがある。
そして、ふと。
思い出しました。
この庭のことを。
この1か月で。
シジュウカラも来ました。
2羽。
ちょこちょこと、動き回って。
軽やかで。
見ていて、楽しい鳥でした。
でも。
それ以降。
来なくなった。
ヒヨちゃんが追い払ったのか。
それとも。
果物が好みじゃなかったのか。
分かりません。
ただ。
去年の夏は。
ひまわりの種があって。
いろんな鳥が来ていました。
にぎやかで。
ちょっとした、集会みたいで。
でも今は。
ヒヨちゃんだけ。
こうして見ていると。
庭って。
ただの庭じゃなくて。
ひとつの世界なんだな、と。
ルールがあって。
バランスがあって。
ちゃんと流れがある。
にぎやかな時期もあれば。
静かな時期もある。
そして、今は。
ヒヨちゃんの時間。
その中で。
ヒヨちゃんは。
毎朝ちゃんと来る。
ちゃんと食べる。
力強く、生きている。
それを見ていると。
少しだけ、思うんです。
変わらないものがあると、
人は少しだけ、整う。
人間も。
もう少しだけ。
ちゃんと生きてもいいのかもしれない。
雪の日でも。
変わらず来るものがある。
変わらず続くものがある。
それだけで。
少し、整う気がするんです。
再生する身体。
再起する人生。
ヒヨちゃんは今日も、
ちゃんと来る。



コメント